NEWS ON PAPER 6月号

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こんにちは。ON PAPERメンバーのライターRakuです。「NEWS ON PAPER」では、メンバーインタビュー、イベントレポート、ON PAPERのホットな話題をお届けします。

第2回は、メンバーの紀山仁美さんにインタビュー!

紀山さんの仕事をひと言でいうと、「人事」。しかもお客さんは、ドイツをフィールドにした会社や従業員なのだとか。

「ドイツで人事」ってどういうこと? 人事のどういうところがおもしろいの??
深掘りしていくと、紀山さんの人事にかける情熱と、なかなかオトコマエな気質を垣間見ることができました。

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ワクワク働ける社会を

Raku ドイツで人事の仕事って、どういうことをしているんですか?

紀山 ドイツにある、日系企業を対象にした人材エージェントで働いています。日本でいう「リクルート」を想像してもらえばわかりやすいかも。

ドイツで仕事を見つけたい日本人と企業をマッチングしたり、ドイツに進出してきた日本企業のサポートをしたりしています。

日系企業には、ドイツ語はもちろん、英語が話せる人も少ないでしょう? それだと現地のエージェントは使いにくいから、日本人の人材ストックのある、うちのような会社が必要とされるんです。

Raku 日系企業向けの人材エージェントかぁ……。そういうマーケットがあること自体、紀山さんと出会うまで知りませんでした。

紀山 約20年前に、私の所属する会社が始めたんですけど、ここ数年で競合が増えて。今は5~6社ありますね。

Raku 「ドイツ×日系企業向け」だけでそんなに? ぶっちゃけ、需要はあるんですか?

紀山 ブレグジット(イギリスがEU離脱を決めたこと)の影響で、日系企業がイギリスにあったヨーロッパ支社をドイツに移転させるケースがけっこうあって。

Raku なるほど。紀山さんと昨年末に出会ったときは、ドイツと日本をよく行き来してましたけど、最近はON PAPERで会う回数が、前よりも増えましたね。

紀山 会社に籍はあるんですが、そちらのウェイトを少し減らして、会社とは別に新しいビジネスを、これから立ち上げようと思っているんです。今は日本で腰を据えて、その準備をしているところです。

Raku 会社員と自営業の2本立てですね! 新しいビジネスも人事系ですか?

紀山 はい。まだ準備段階なので固まっていないんですが、研修やセミナー、育成、教育といった感じですね。

研修というと堅い感じがするけれど、ひと言でいうとね、みんながワクワクして働ける社会を作りたいなと思って。

今、大半の人が、朝起きて「また今日も仕事やー」と思ってるじゃないですか。そうじゃなくて、「よし、行こう!」と前向きに思える人が増えたらいいな、と。

働く親の姿を見て、子どもが「お父さんみたいに、お母さんみたいに働きたい」と思うようになるのが理想ですね。「またお父さん、イヤイヤ仕事行ったよ」じゃなくてね。

Raku あー、私の父はイヤイヤ仕事行ってたな……。いつもしんどそうだなって。

私、今みたいに好きなことを仕事にしているのに、どこか「仕事=しんどい」というイメージがあるのは、その影響かも。

紀山 働くお父さん・お母さんも元気になって、そして家族も元気に、平和になるようなムーブメントを起こしたいなと思っています。

Raku 家族はいちばん小さな社会ですもんね。大げさかもしれないけど、家族平和が、ひいては世界平和につながるような気がします。

紀山 いや、本当にそう思います。実際、家庭で愛情を受け取れる環境にいる人はキラキラしていますよね。いいことも悪いことも、親の影響って大きいですから。

Raku ちなみに紀山さんのご両親は、どんなふうに働いていたんですか?

紀山 実家は石川県で、お米の専業農家なんです。だから私、お米だけでここまで育ったんですよ。

Raku 農業って肉体労働だし、日本人のお米離れもあるから、大変でしょう。

紀山 そうそう。だからなんとかして付加価値をつけようと、ライスセンターを自前で運営し、ブランド米として出荷しています。最近は、農薬はもちろん肥料もあげず、土のエネルギーだけでお米を育てる農法に挑戦しているそうです。

その農法のおかげで、先日実家に帰ったときは、田んぼに色んな生き物が住むようになっていました。それを見て、私もうれしかったなぁ。

Raku ご両親が、働くうえでのいい見本になっていますね。

紀山 そうですね、実家が自営業だから、新ビジネスを立ち上げることにも抵抗がないのかもしれません。やっぱり私は、父と母にはかなわない。仕事に対する姿勢もそうだし、物理的にも親のほうが私より体力あるし。

Raku なんか素敵だなぁ。紀山さんが、つやつや輝く一粒のお米に見えてきました(笑)

ファーストキャリアは、ガラス屋さん

Raku そもそも、紀山さんが人事の仕事に出会うきっかけは何だったんですか。

紀山 金井先生という、大学の先生の影響です(金井壽宏氏:神戸大学経営学部教授で、キャリア・人材研究の第一人者)。

金井先生の「1日8時間、つまり起きている時間の半分を費やすのが仕事。だから、たとえ生活のための仕事であっても、それは必ず人格形成に関わる」という考えと、やわらかな話し方とオーラに魅了されて、人事に興味をもちました。

だから人事に力を入れている会社で働きたいと思って、新卒で旭硝子に就職しました。

Raku 就活の段階で「人事だ」と思ったんですね。一般的には、何がやりたいかを学生の時点で自覚している人のほうが少数派です。多くの学生は、名前を知っている会社にとりあえずエントリーする、みたいな。

紀山 私の場合は、「この会社で人事をやりたいかどうか」の視点でいろんな会社を見て、最終的に受けたのは旭硝子1社だけでした。

落ちたら、料理が好きだから調理師学校に行くか、ワインソムリエの資格を取ってレストランで働こうと思って。行きたくないところに行くのは嫌だから、それくらい覚悟を決めてましたね。

Raku ええーっ! でも、会社って総合職採用だから、旭硝子だって、受かっても必ず人事に配属されるわけではないでしょう?

紀山 もちろんそうです。でも面接のときから「とにかく人事がしたい」「人事以外は行きません」と話していたんです。だから、内定が出たときもうれしかったけど、それ以上に配属が人事になったと聞いたときは、本当にうれしかったですね。

Raku なんてオトコマエな……。実際に仕事をしてみて、人事の仕事のおもしろみを感じることはできましたか。

紀山 入社したとき、先輩から「人事は、会社の“費用”だから。決して利益を生み出す部署ではないんだよ」と言われました。

だからこそ、費用でしかない存在がどうやって会社に貢献するかを、常に頭に置いていましたね。

Raku 具体的には、どんな取り組みを?

紀山 とにかく、現場で働く人とのコミュニケーションを心がけました。ガラスを作る会社なので、1日に1度は作業着を着てヘルメットと安全靴を着用して、工場に足を運びました。

そこで「どうですか、ケガしてないですか」と、現場のおっちゃんたちに声をかけたりして。若手だったこともあり、よくかわいがってもらいましたね。

Raku たしかに人事の社員が毎日工場を見るって、珍しいですね。一般的には、「本社は現場がわかってない!」が、現場の常套句ですもんね。

紀山 製造現場には、ガラスを作る800度の窯があるんです。本当に熱くて大変な仕事なので、やっぱり行かないと、どれだけ熱いかわからないから。

現場のおっちゃんに「窯に顔を近づけてみ」と言われてその通りにしたら、前髪が全部燃えちゃって。今となっては笑い話です(笑)。

窯の運転は止められないので3交代制で深夜勤務の人もいるし、お正月も誰かが働いてる。そして周りには、それぞれの家族がいる。それを肌で感じることが、人事の仕事をするうえで何よりも大事だと思うんです。

こうして普段からコミュニケーションを取っていたおかげで、他の会社の人事と現場よりも、仕事は進めやすかったと思います。少し無理をお願いしたときも、普段のコミュニケーションのおかげで、なんとか打開策を考えてくれようとしたり。

現場を見て、働く人のすぐ横に立つことが、人事の仕事の醍醐味でした。

身一つでドイツへ

Raku そこからドイツへは、どうつながるんですか?

紀山 旭硝子はいい職場でしたが、学生の頃から「海外で働きたい」という思いがあったので、3年経った頃に退職してドイツに渡りました。

Raku ドイツの会社とご縁があったんですか?

紀山 いえ、最初は縁もなく、仕事もなく、我が身一つで行ったんです。現地の語学学校でドイツ語を勉強して、そこから向こうで就職活動をし、製造業の会社の人事として働き始めました。

Raku 身一つでドイツに行ったとは、これまたオトコマエな……。海外の国の中でも、ドイツを選んだのはなぜですか。

紀山 学生時代にドイツに留学した際に、せっかく行ったのに英語だけで生活できてしまい、ドイツ語をまったく覚えずに帰って悔しかったのが一つ。新しい言葉を身につけるのも、20代ならまだいけるかなと。

あとは、ドイツはワイマール憲法を制定した国でしょう。人事の仕事をするなら、憲法や法律に強い国で学びたいとも思いました。

ドイツ企業の人事で3年間働いた後に、今の日系向け人材エージェントに転職しました。

ドイツと日本の違い

Raku 日系企業向けの人材エージェントでは、具体的にどんな仕事を?

紀山 働きたい人と企業のマッチングも大事な仕事ですが、日系企業のドイツ駐在員の方から、ドイツ人のマネジメントについて相談を受けることが多いですね。

そもそも、日本からドイツに赴任してくるのは、営業部長など現場で活躍してきた人がほとんど。人事を経験した人が来ることは、まずありません。それなのに、いきなりドイツ人のマネジメントを任されるから、皆さん戸惑ってしまうんです。

国が違えば、働き方も当然違います。違いは理解することが大事で、放っておいてはいけない。そこで「そうですよね、違いますよね」と寄り添いながら「ドイツの習慣はこうですよ」とお伝えして、駐在員の方の気づきを促したりしています。

Raku ドイツと日本では、どんなところが違うんですか。

紀山 まずは休みの取り方ですね。日本の会社員で有給休暇を使い切る人は滅多にいませんが、ドイツ人はみんなが30日の休暇を使い切るんです。

年間30日といえば、平日に換算すると6週間。しかも、少しずつ休むのではなく、2週間×3回か、3週間×2回と、まとめてバカンスを取ります。つまり、一人がごそっといなくなる期間が、そんなにあるということ。

実際にドイツの法律では、2週間の休暇を職場は許可しなくてはいけないので、駐在員としてドイツに赴任した日本人の上司は、その穴埋めのマネジメントもしなくてはいけません。

Raku しっかり休める風土はうらやましいけど、駐在員の立場になると、そういう職場をマネジメントするのは大変でしょうね。

ドイツでは、普段の勤務でもほとんど残業をせずに帰宅すると聞いたことがありますが、本当ですか?

紀山 本当です。6時以降残っている人は、ほとんどいませんね。

Raku でもそれで、仕事というか、社会はちゃんと回るんですか?

紀山 たしかに、私たち日本人の感覚でいえば、ちょっと詰めが甘いなと感じることもあります。「あんた、2週間休んだらその仕事止まっちゃうけど、休暇前に終わらせないの?」みたいな(笑)

それでも経済は伸びていて、国民一人あたりのGDPは日本より高いですからね。やりすぎないことがいいのかな。腹6分目というか。

Raku 8分目でもなく、6分目なんだ(笑)

紀山 そう(笑)。日本人は12分目じゃないですか。それぞれメリット・デメリットがあるから一概にドイツがいいとは言えませんけど、日本人が見習うべきこともあるのかも。

それに、日本人とドイツ人が一緒に企画や会議をしても、ドイツ人は法律書をもってきて「私にはこんな権利がある」と説明したりするんですね。日本人はそういうことをしないから、圧倒されてしまって。差を認める前に、ショックを受けてしまうんですね。

Raku なまじ、「日本人とドイツ人は似てる」と言われるから余計かも。

紀山 そう!でも全然、似てないですから(笑)。だからそういうショックを埋めるお手伝いを、私たちがしているんです。

そこで日本人駐在員がうまくマネジメントできないと、「やっぱり日系企業だしな」と、優秀なドイツ人が来てくれなくなります。それは、企業にとっても日本全体にとってもアンハッピーですよね。

人材エージェントで経験してきた、こうしたお客さんの要望や困りごとが、新ビジネスを立ち上げるきっかけにもなりました。

やはりビジネスなので、最初は資金を集めるためにも、企業向けに研修を行ったりするつもりです。でもある程度お金が集まったら、学生や定年退職前後の人にも、生涯学習の機会を提供したいと考えています。

これからの時代をワクワク働き、いきいき生きるためには、日本だけを見ていてはいけないと思うんです。

自分の周りだけでなく、世界全体を見渡して「こんなにすごい人がいるんだ」とか、逆に「同じ地球に生まれたのに、こんなに大変な生活をしている人がいるんだ」と理解することが、自分の人生を豊かにすることにもつながります。

これだけ技術が発達して、海外とも簡単にコミュニケーションできるようになっているので、とくに若い人には、海外の同世代の人とコミュニケーションしてほしいし、それができるような環境や土壌を作っていきたいですね。

ON PAPER、どうよ?

Raku では、せっかくなのでON PAPERについても聞かせてください。紀山さんがここを借りたのは、新しいビジネスの準備のためですか?

紀山 もともとは、ドイツの人材エージェントの日本拠点として、私が働きやすい場所を探していたんです。ちょうどON PAPERがオープンするタイミングだったので、新しいところを応援したいなという思いがありました。

Raku メンバーになって、よかったと思うことは?

紀山 海を見ながら仕事できるのが気に入ってます。あとは、いろーんな人に出会えたことですね。自分の友達から経由してもたどり着かないだろう人にポンと出会える。遺伝子でいうと突然変異みたいな。

Raku 誰との出会いが印象的ですか?

紀山 鍼灸師の庄子さんとか!庄子さんにはホント、よくしてもらってます。彼が開催する勉強会で出会った大学の先生とは、定年退職した人が社会から地域に急に放り出され、困ってしまうのを防ぐためのアクションを一緒に起こそうと、すでに何度か打ち合わせをしています。

Raku すごい!ここでの出会いが、さらに広がってますね。去年のクリスマス、ON PAPERでシュトーレンを食べる会をしたのを覚えてますか? 私、オープンしたてのON PAPERを応援したくて、フットワークの軽い庄子さんを誘ったんですよ。でもまさか、そこでの出会いをこんなに活用してくれているとは。私もうれしいな。

逆に、ON PAPERに「もっとこうしてほしい」と思うことはありますか?

紀山 ……特に、ないかな。でもそれ、よくないですよね。興味がないから「ない」と言ってるみたいで。

Raku 無理に言わなくてもいいけど(笑)。

紀山 植物をもっと増やしてほしいかな。今も観葉植物はあるけれど、花が咲くものがあったらいいですね。

海外で生活すると、日本はそこが少し弱いと感じます。やっぱり花や緑って、人に元気を与えるんです。家具やインテリアがおしゃれなのもいいけど、やっぱり植物はライブリー感があるというか。長持ちして、世話が楽なものでいいので、そこをお願いします!

Raku そうですね、私も花があったらうれしいな。紀山さん、今日はありがとうございました!


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実は紀山さん、私とは下の名前が一緒で(漢字まで!)、出身大学も同じなんです。

だから初めて会った時から親しみを感じていたんですが、「就職試験を受けたのは1社」「仕事ないのにドイツ渡航」なんて、めちゃくちゃ潔い。
同じ名前でも、石橋を叩きまくって壊す私とは、まるで逆です(笑)でも、だからこそ色んな発見があり、盛り上がったインタビューでした。

コミュニティ型ワーキングスペース『ON PAPER』では、新しい価値をつくり出す人が互いに助け合い、高め合いながら活動しています。

興味のある方は、お気軽に見学・体験にお越しください。
https://onpaper.jp/contact/


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