NEWS ON PAPER vol.1
こんにちは。ON PAPERメンバーのライターRakuです。「NEWS ON PAPER」では、メンバーインタビュー、イベントレポート、ON PAPERのホットな話題をお届けします。
記念すべき第1回は、メンバーのグラフィックデザイナー、「カワッタデザイン」の河田悠輝さんにインタビュー!
河田さんは2011年から神戸電子専門学校で教員をしていますが、2018年4月からフリーランスに。現在も平日夕方は授業を担当しながら、制作活動をしています。
なんせ決めゼリフは「カワッタデザインのカワタです」(^^) 河田(カワタ)さんだから「カワッタデザイン」なんて関西人丸出しの屋号、おもろすぎやろ!
定期的に開催する「非デザイナーのための勉強会」は、毎回キャンセル待ちが20人も出るほどの大人気講座なんですよ!
そんな河田さんに、経歴と独立した理由、フリーランスとしての自己管理について聞いちゃいました。金銭面のことまで、けっこう赤裸々にぶっちゃけてくれました!
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「教える」と「デザイン」
Raku ずばり、河田さんは「何屋さん」ですか?
河田 ひと言でいえば、「教えることもできるグラフィックデザイナー」です。
Raku いつ頃から、デザインの道に進もうと思ったんですか。
河田 小さい頃から、絵を描くのが好きだったんです。おじが竹村よしひこという『ビックリマン』を描いた漫画家なので、その影響もあって。
Raku ええええーーっ!! ビックリマンシール、子どもの頃にめっちゃ集めてました!
河田 でも高校生になる頃は、当時出始めたパソコンにのめりこみました。『ゼルダの伝説』が好きで、本屋でHTML言語の本を買い、自分でファンサイトを作ったりしてましたね。
だから、絵とパソコンという好きな領域が重なったグラフィックデザインに惹かれました。デザインの専門学校に進み、社会人1年目はデザイン事務所、2年目以降は広告会社で制作をしていました。
Raku 「教える」ことに出会ったのはいつ?
河田 勤めていた会社が当時、仕事の一部を中国に外注していたんです。外注先のスタッフにデザインを教えに行かないかと声がかかって、中国東北部の大連(だいれん)に行ったのがきっかけです。
向こうのスタッフにデザインを教えたり、帰国後も班のメンバーや新人社員に教えたりするうちに、「教えるのって、楽しいな」と思うようになりました。
Raku 教えることのどんなところが楽しいんですか。
河田 自分が教えたことによって、その人が今までできなかったことが、できるようになるのがうれしいですね。
それに教えることって、自分がちゃんと理解しているかどうかをチェックする鏡なんです。
自分がふだん何気なくやっていることでも、すべて言語化してわかりやすく伝えなければいけない。だから相手に伝わりづらいときは、自分の教え方が悪いということ。
さらに言えば、自分がきちんと理解できていないのに、わかった気になっていたということなんです。
今でも学生に何か質問されて「~~~ちゃう? たぶん」と答えてしまうことがあります。関西人は言い切ったあとに「知らんけど」と言いますが、まさにその状態(笑)。
そのたびに、勉強し直して知識や技術を定着させました。自分もスキルアップできることが、教える魅力でもありますね。
「教える」プロフェッショナルへ
Raku そこからどうやって、神戸電子専門学校の教員になったんですか?
河田 自分で「やりたい」と周りに言いふらしていたんです(笑)。
広告会社時代から学園祭に足を運んで、知人の先生たちに「ぼくも教えること、いつかやってみたいんですけど」なんて言っていたら、たまたま教員に空きが出て、後任として声をかけてもらいました。
私、そういうことが多いんですよ。やってみたいことを言いふらしていると、意外と周りの環境が変わったり、声がかかったり。
Raku すごい、自分で引き寄せてますね!授業ではどんなことを教えていましたか。
河田 デザインソフトの使い方などはもちろんですが、学生を外に連れ出し、地域と関わることに力を入れていました。
技術を教える専門学校とはいえ、教育の根っこは人間教育だと思うんです。それには学校で教えるだけではなく、社会とどれだけ触れられるかが大事なんじゃないかと。
そこで、学校から近い三宮近辺の制作会社とつながり、学生はそこから実際にもらった課題に取り組みました。
これは、制作会社の社員さんに直接教えてもらえるのがメリットなんです。教員にない現場視点のアドバイスももらえるし、制作の中で互いにマッチして、そのまま就職につながるケースもありました。
Raku めちゃくちゃいい課外授業じゃないですか!
河田 学生たちにしても、今までは神戸で就職したいと思っても、神戸にどんな会社があるのかわからないまま東京や大阪に就職するケースがほとんどでした。
神戸から人が流出するこの状態を変えたかったし、制作会社側も、面接ではわからない学生の人柄がわかるといって喜んでくれています。
Raku win-winの関係が築けたんですね!
河田 こうやって学校の外に目を向けるうちに、私自身も「お客さんが抱える課題は、チラシやサイトを作れば必ずしも解決するわけではないかもしれない」と思うようになりました。
集客する、売り上げを増やすのが目的であって、チラシを作ることが目的になったらダメなんです。
お客さんの課題解決のために、一番いい方法がグラフィックデザイン以外だったなら、それを提案したほうがいい。このマインドを伝えるために、「ヒラメキデザイン」という授業を2017年から始めました。独立した今も、この授業を担当しています。
全学科の1年生に向けた授業なんですが、コミュニケーションが苦手な子も少なくありません。社会人としてのコミュニケーション力を身につけるために、授業はすべて、学科を混ぜたグループワークです。
Raku わー、コミュニケーションが苦手な子は大変そう……。
河田 嫌がる学生もいますが(笑)、就職活動を経験してやっと「先生、ありがとうございました」と言ってくる子もいますね。
フリーランスの本音
Raku 専門学校の教員として活躍していたのに、なぜ独立したんですか。
河田 教員って、お客さんからの依頼でデザインする「現場」にはいないでしょう?現場から離れている人が教えることに違和感があって。自分が学生なら、ちょっと嫌やなと思いました。
だから学校職員という立場をやめて、フリーランスとして制作することにしたんです。
Raku 安定した立場を捨ててフリーランスになることに、迷いはありませんでしたか?
河田 まったくありませんでした。不安もなかったですね。
Raku 意外です!河田さんには奥さんと小さいお子さんがいますから、「生活やっていけるかな……」と思いませんでしたか。
河田 妻には申し訳ないですが、全然なかったです(笑)。ありがたいことに妻も悩みながらも「ええんちゃうん」と言ってくれましたし。
Raku 今も授業は担当しているとのことですが、授業と制作活動のバランスはどれくらい?
河田 半々くらいです。
Raku フリーランスは自己管理が大事ですけど、河田さんはどうしてます?
河田 実は私、それがすごく苦手で(笑)。誰かに管理されないとメリハリがつけられないんだと、フリーになってよくわかりました。
一時期は「〇〇を何時から始める」と、すべてのスケジュールを妻に送って管理してもらったこともありました。
最近は朝4時に起きて、娘が起きだす7時ごろまでの3時間、集中して仕事をする習慣がついてきました。その後に朝ご飯を食べ、10時くらいにここON PAPERに来たりしています。
Raku ということは、早めに寝るんですか。
河田 うーん……。といっても昨日も夜12時くらいだったかな。
Raku 睡眠時間けっこう短いですけど、大丈夫ですか?
河田 家にいるときには昼寝しますから、意外に大丈夫です。
Raku お休みは、月に何日ほど取れますか。丸1日休みの日って、あります?
河田 うーん……、ゼロかなあ。何かしらやってますね。とくに去年12月ごろからそうです。土日に娘と遊んでも、それが終わればまた仕事を再開する感じ。
でも、それがそんなに嫌じゃないんです。やればやるほどお金も入ってきますし。
Raku ぶっちゃけ、独立してから金銭面はどうですか。
河田 レギュラーの仕事がないので、月によって入ってくる金額は違いますね。独立したのが2018年4月で、5月頃までは忙しかったんですが、6・7月になると急に、パタッと仕事の量が減ってしまって。
納品して約2カ月後に報酬が入るサイクルなので、8月、9月に「あれっ、お金がない」「これはやばい」と。そのときはさすがに、家の中が少し険悪なムードになりましたね(笑)。
仕事をしてすぐにお金が入る方法を必死に考えて思いついたのが、「非デザイナーのための勉強会」でした。
Raku あの人気講座が、そこから生まれたとは!
河田 人間、困ったら知恵が働くのかもしれません(笑)。
最初は自信がなくて、20人集まればと思っていたところ、45人も集まってくれました。しかも約8割もの人がシリーズの2回目も受講してくれて。
今まで学生向けに教えていたことが、社会人にも受け入れられるとわかったのが、うれしかったですね。
Raku フリーランスになって、よかったことは何ですか?
河田 経営やビジネスに関するマインドが備わってきたことです。
勤め時代は経営について考えることはなかったし、お金を稼ぐことにどこか嫌らしいイメージを持っていました。
でも最近は、稼ぐのは全然悪いことじゃないし、むしろ自分がどれだけ世の中に価値を提供でき、どこまで稼げるのか挑戦してみたいと思うようになりました。お金は、それと同じ価値のものと交換して、社会を回るものですから。
それに、神戸起業操練所での学びがめちゃくちゃ役立っています。
たとえば、ブランディングといえば、他のデザイナーと競って技術的に勝つことだと今までは思っていました。
でも「ブランディングは、無理せず自分のポジションを作ること」と教わって、誰かに勝つのではなく、「教えること」を含めた私の個性をオープンにすることが、ブランディングなんだとわかったんです。
それで自信を持った価格設定をできるようになったからか、去年の12月頃から、一気に売上が伸びました。
Raku えっ、うらやましい!
ON PAPERのココが好き!
Raku 神戸には約20もコワーキングスペースがありますが、河田さんがON PAPERを選んだのはなぜですか?
河田 ここがオープンする直前の2018年11月頃、コミュニティマネジャーの井上雄嵩さんが、私のサイトから問い合わせてくれたのがきっかけです。
ON PAPERを運営する「イディー(制作会社)」が、外注できるデザイナーを探していると声をかけてもらったんですが、私の経歴をお話しすると、「それなら、ここでデザイン講座をやってください」ということになって。
メンバーになる前に、講座の開催が決定しちゃいました(笑)。
Raku それまでは、授業以外は家で仕事をしていたんですか?
河田 はい。でも家は娘が走り回っているので、本当に集中したいときはコワーキングスペースのドロップインや、カフェを利用していました。
どこか拠点がほしいと思いながらも、秋頃まで金銭的余裕がなかったので、仕事の単価が上がったタイミングとON PAPERの出会いが重なって、メンバーになりました。
Raku ON PAPERで気に入ってるところはどこですか?
河田 まず、このおしゃれな空間です。家は子どもがいてどうしても散らかりがちなので、この雰囲気でデザインの仕事ができるのがいいですね。
あとは、デザインや色彩の参考書籍が豊富なのが、本当にありがたいです。デザイン関係の本って買うと高いので、デザイナーにとってはもう宝の山です!
ビジネス系の本はあっても、ここまでデザイン系の本がそろっているコワーキングスペースは、なかなかないんじゃないかなあ。
Raku 逆に、「ここをこうしてほしい」というところはありますか。
河田 まったくないです。スタッフの皆さんもさりげなくコーヒーを入れてくれたり親しく話してくれたりするので、めちゃくちゃ満足しています。
Raku 最後に、独立や起業を考えている人にメッセージをお願いします。
河田 独立には勇気がいるとよくいわれますが、「独立かな?それともやっぱり会社員かな」とクヨクヨ迷うのは時間の無駄だと思います。
人生100年時代といわれ、テクノロジーの進化も激しいこれからの時代を考えると、このまま同じ仕事を続けられるのは、なかなか難しいかなと思うんです。
私は今年32歳ですが、これからまだ何回も、変身しなくてはいけないと思うんです。
Raku 「変身したい」かどうかにかかわらず、変身を迫られる時代だと。
河田 そうですね。1つの組織にとどまり続けるべきというのは昔の考え方で、一度フリーランスになって続かないと思ったら、またどこかに勤めればいい。私もそのつもりですし、日本社会は、それで死んでしまうことはないですから。
環境が変わると新しい発見がたくさんあるので、また勤めることになっても、それが生きてくるはずです。
すべてのことが勉強だと思って、飛び出したほうがいいと思います。少なくとも、私は良かったです。「悩んでるんやったら、まず行動!」と言いたいですね。
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物腰がやわらかく礼儀正しい話し方で、おだやかな印象の外見とは裏腹に、内面は熱くて、竹を割ったような性格の河田さん。仕事に対する考え方など、とても参考になりました。
コミュニティ型ワーキングスペース『ON PAPER』では、新しい価値をつくり出す人が互いに助け合い、高め合いながら活動しています。
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